高校数学で登場する「積分」は、多くの人が苦手意識を持つ単元のひとつです。「面積を求めるための計算」というイメージを持っていたり、「微分の逆」という覚え方をしているけど、具体的には何だっけ? と記憶が薄れている方もいらっしゃるかもしれません。
「積分」は現代の工学や科学を支える、とても強力な数学ツールの一つです。この考え方を身に着けておくと、時々刻々と変化する量を積算したらどのぐらいの量になるのか、ということをイメージ・計算しやすくなり、日常でも新たな発見があるかもしれません。
この記事では、まず積分という数学操作がどんなイメージなのかを図解し、ごく簡単な三角形の面積を積分で求めることで、積分の便利さを皆さんにお伝えしていきます。そして、小学校や中学校ではただ覚えるだけだった円の面積を求める公式が、積分を使って導出できることをご紹介します。それでは行ってみましょう!
積分のイメージは木琴!
小学校のころ、大好きだった楽器の一つに「木琴」があります。音楽室にいつも置いてありましたが、あの独特な音色、バチ(正式名称はマレットだそうです)を押し当てながらスライドすると、ポロロロロン♪となる感じがたまりませんでした。ところが大人になってから気づいたのです。木琴って積分なんじゃないかと。
はい、こちらが河合楽器製作所さんの販売している、KAWAIシロホン16Sです。
このちっちゃい木琴、皆さんも一度は触ったことはあるのではないでしょうか? ピアノほど高価ではなく、感覚的にたたいてリズムや音階を感じることのできる、素晴らしい楽器ですね。
ですがよーく見てみると、全体としては台形の形をしていますが、長方形の板(正確には音盤と呼ばれるそうです)がいくつも連なって、楽器を構成していることがわかります。これこそ、まさに「積分」のイメージなのです。
積分は非常に高度な積算を計算するための道具です。積算したい対象が複雑な形をしていても、さっきの木琴の例のように区間を細かく分割し、その一つ一つを単純な形で置き換えて、全体を足し合わせることで積算値を求めることができます。この「細かく分けて全部足す」=「全体の積算」という概念をイメージするために、皆さんのよく知っている直角二等辺三角形の面積を例にして解説していきます。
直角二等辺三角形の面積を分割して求めてみる
それでは、下図の直角二等辺三角形の面積を求めてみましょう。底辺と高さが \(10 \: \mathrm{cm}\) の三角形です。

三角形の面積は小学校5年生で習う内容です。小学校では三角形の面積の公式は、
$$ (三角形の面積)= (底辺の長さ) \times (高さ) \div \: 2 $$であると教わります。この公式を使うと、直角二等辺三角形の面積は、
$$ 10 \times 10 \div 2 = 50 \: \mathrm{cm^2} $$と簡単に求まります。え? 積分いらないんじゃないかって? そんなに焦らないでください。この後、しっかり積分の威力が実感できると思います。
それでは気を取り直して、今度は積分をまねて、直角二等辺三角形の面積を求めてみましょう。積分の基本的な考え方は、
- 積算したいものを小さく分割し、
- 単純な形にした後、
- すべてを足し合わせる
という3ステップで成り立っています。今回は三角形を小さな長方形に区切って面積を求めてみましょう。お、早速木琴の板がやってきましたね!

三角形の面積を四角形で近似する
まずは、三角形の面積を1つの四角形で近似してみましょう。三角形からはみ出ることなく、四角形をうまく入れる方法を考えます。まず、1つだけ四角形を入れる場合を考えてみましょう。下の図は、面積を求めたい三角形にはみ出ないように、最大サイズの四角形を入れた時の図です。

中に入っている四角形は縦も横も \(5 \: \mathrm{cm}\) の正方形になっています。この正方形の面積は当然、 \(5 \times 5 = 25 \: \mathrm{cm^2}\) です。これは求めるべき三角形の面積 \(50 \: \mathrm{cm^2}\) とは2倍も異なっており、まったく一致していません。では次に、四角形の数を増やしていくとどうなるかを見てみましょう。
四角形をどんどん細くする
今度は面積を求めたい三角形の中に、もっと多くの四角形を敷き詰めることを考えます。そのときに大切なルールがあります。それは「四角形の横幅はすべての四角形で同じにする」ということです。さて、それでは4つの四角形を三角形の中に敷き詰めて面積を求めてみましょう。

斜辺を5等分して、そこに接する4つの四角形を敷き詰めました。今度は四角形の横幅が \(2 \: \mathrm{cm}\) です。同様に、四角形の面積の合計を求めてみましょう。
$$ ( 2 \times 2 ) + ( 4 \times 2 ) + ( 6 \times 2 ) + ( 8 \times 2 ) = 40 \: \mathrm{cm^2} $$答えは \(40 \: \mathrm{cm^2}\) になりました。四角形が一つだけの時よりは、だいぶ \(50 \: \mathrm{cm^2}\) に近づきましたが、まだ \(10 \: \mathrm{cm^2}\) の差があります。それでは、もっと刻み幅を増やして、今度は四角形を9個敷き詰めたらどうなるかを見てみましょう。

だいぶ細かくなりましたね。まさに木琴みたいになっています。今度は四角形の横幅が \(1 \: \mathrm{cm}\) です。これらのすべての四角形の面積の合計を求めてみましょう。
$$ ( 1 \times 1 ) + ( 2 \times 1 ) + ( 3 \times 1 ) + ( 4 \times 1 ) + ( 5 \times 1 ) \\ + ( 6 \times 1 ) + ( 7 \times 1 ) + ( 8 \times 1 ) + ( 9 \times 1 ) = 45 \: \mathrm{cm^2} $$答えは \(45 \: \mathrm{cm^2}\) になりました。四角形が4つだけの時よりも、さらに \(50 \: \mathrm{cm^2}\) に近づきました。今度は四角形の数を一気に49個にしてみましょう。

もはや隙間を目視するのが難しいレベルですね。この時、四角形の面積を合計すると \(49 \: \mathrm{cm^2}\) になります。四角形を細くすればするほど、四角形の面積の合計が求めたい三角形の面積 \(50 \: \mathrm{cm^2}\) に近づいていく様子がわかりますね。
無限に細い四角形を無限個敷き詰めると…
実は、敷き詰める四角形の数を \(x\) 、四角形の面積の総和を \(y\) とするとき、この二つの間には次のような関係があります。
$$ y = 50 \: – \frac{50}{x+1} $$これは反比例型の関数です。四角形の個数( \(x\) )が増えれば増えるほど、三角形の面積にどんどん近づいていく様子が下のグラフからもお分かりいただけると思います。

では四角形の個数( \(x\) )を無限に大きくしたらどうなるのでしょうか。これこそまさに「積分」の考え方なのです。ある関数の積算値を求めるために、小さい長方形を敷き詰めてその関数の積算値を近似します。この時、分割する細かさを無限大にすれば、それはもはや近似値ではなく、関数の積算値と完全に一致するはずです。
数式で考えると、先ほどの双曲線の方程式において、 \(x\) が無限大の極限を考える問題になります。つまり、
$$ y = 50 \: – \frac{50}{\infty+1} $$という状態ですね。右辺第二項の分母に \(\infty\) が含まれていますので、この分数は全体として \(0\) になってしまいます。従って、小さい四角形の面積の総和 \(y\) は三角形の面積 \(50 \: \mathrm{cm^2}\) と一致することになります。
積分とは
ある関数 \(f(x)\) の積算値を求めるために、縦 \(f(x)\) 、横 \(dx\) の小さい長方形を敷き詰めてその関数の積算値を近似します。この時、分割する細かさを無限大にすれば、それはもはや近似値ではなく、関数の積算値と完全に一致するはずです。これが積分の考え方です。

\(a\) から \(b\) までの区間において、関数 \(f(x)\) の積算値、すなわち積分は、数学記号を用いて次のように表します。
$$ \int_a^b f(x)\,dx $$独特な記号 \(\int\) は「インテグラル(integral)」と呼ばれており、考案したのは17世紀のドイツの数学者ライプニッツです。ライプニッツはニュートンと並んで微積分学の創始者として知られています。
ライプニッツは「和」を意味するラテン語 summa や英語の sum の頭文字である S を縦方向に引き伸ばした形を採用したそうです。
$$ S \quad\longrightarrow\quad \int $$日本語のカタカナやひらがなが漢字から生まれた過程に似ていますね。こうして誕生した記号は非常に使いやすく、300年以上経った現在でも世界中の数学や物理学で使われ続けています。また、積分記号の横には、必ず次のような記号が付いています。
$$ dx $$これもライプニッツが導入した記号です。\(dx\) は「非常に小さな幅」を表しています。これは関数のグラフの積算値を求めるときに敷き詰める長方形の幅に対応します。したがって、
$$ \int f(x)\,dx $$は、「幅 \(dx\) の小さな長方形を無数に並べ、その面積をすべて足し合わせる」という意味になります。積分記号と \(dx\) はセットで考案されたものであり、どちらも積分の本質を表しています。
三角形の面積を積分で求めてみよう
さて、それではいよいよ三角形の面積を積分で求めてみましょう。積分を使うためには、求める対象を関数を使って表す必要があります。今求めたいのは、底辺の長さ、高さが共に \(10 \: \mathrm{cm}\) 直角二等辺三角形の面積です。直角二等辺三角形ということは、斜面の傾きは \( 45^{\circ} \) です。つまり \( xy \) 座標で表すと \( y = x \) の傾きに一致します。百聞は一見にしかずなのでグラフを見ていただくほうが早いかもしれません。

上の図の色がついている部分の面積が求めたい値です。積分の考え方をなぞると「関数 \( y = x \) の区間 \( a=0 \) から \( b=10 \) における積分値を求める」、というのが今やりたいことになります。これを式で表すと次のようになります。
$$ \int_0^{10} x\,dx $$これは
- 関数 \( x \) を積分した関数(原始関数という)を求める
- 区間 \( [0, 10] \) での原始関数の差を求める
という2ステップで解くことができます。早速やってみましょう。
関数 \( x \) を積分した関数(原始関数という)を求める
一般に、関数 \( f(x) \) を積分した結果得られる関数 \( F(x) \) を、関数 \( f(x) \) の原始関数と呼びます。式で表すと次のように書けます。
$$ F(x) = \int f(x)\,dx $$今考えている関数は \( f(x) = x \) なので、 \( x \) の原始関数を求めればよいことになります。高校数学で学ぶ積分では、様々な関数の原始関数を求めることや、なぜ原始関数がそうなるのかという証明問題に多くの時間を割きます。ですが、実社会では積分を使ってどうやって問題を解くかがはるかに重要です。原始関数を求める方法はネット上にあふれている公式やAI、コンピューターに頼ってしまえばいいのです。ということで関数 \( x \) の原始関数を求めるために、次の公式を利用しましょう。
$$ \int x^n\,dx = \frac{x^{n+1}}{n+1} + C \qquad (n\neq -1) $$上の式は \( x \) のべき関数( \( x^n \) )の積分公式です。 \( n=-1 \) の時は使うことができませんが、今はそのケースは出てきませんので言及しないことにします。また、 \( C \) は積分定数と呼ばれる定数です。これは原始関数を微分したら元の関数に戻る、という性質を表しています。つまり原始関数にはどんな定数項があっても、微分したら消えてなくなりますよ、ということを表しています。
さて、小難しい話はこれくらいにして、早速三角形の面積の話に戻りましょう。今原始関数を求めたい関数は \( x \) ですので、公式における \( n=1 \) の時に相当します。 \( n=1 \) の時に限定して公式を書き直してみると次のようになります。
$$ \int x\,dx = \frac{1}{2}x^2 + C \qquad (n\neq -1) $$意外にも、とても簡単な形になりました。これはまさに直角二等辺三角形の面積を求める公式を表しています。直角二等辺三角形では、底辺も高さも同じ長さなので、これらを \(x \) と置くと、
$$ (三角形の面積)= (底辺の長さ) \times (高さ) \div \: 2 = \frac12 x^2 $$のように三角形の面積の公式とも一致することがわかります。
区間 \( [0, 10] \) での原始関数の差を求める
次に、区間 \( [0, 10] \) で先ほど求めた原始関数 \(\frac12x^2 \) の差を計算します。この操作は全然難しくありません。区間の終わりを \(x\) に代入した値から、区間の初めを \(x\) に代入した値を引けばいいだけです。この時積分定数 \(C\) は相殺されるので無視して問題ありません。式で表すと次のようになります。
$$ \left[ F(x) \right]_a^b = F(b) – F(a) $$原始関数が求まったら、そこに区間の初めと終わりを代入して差をとるだけです。簡単ですね。実際にやってみましょう。
$$ \left[ \frac{1}{2}x^2 \right]_0^{10} = \frac{1}{2}(10)^2 – \frac{1}{2}(0)^2 = 50 $$やったー! とうとう積分を使って直角二等辺三角形の面積を求めることができました! 答えは \( 50 \: \mathrm{cm^2} \) です! え? 高々三角形の面積を求めるのに、何をめんどくさいことをやっているんだって? そういう読者の方々からの声が聞こえてくるようです。ですが、ここでは積分のイメージをつかんでいただくために、あえて小学生でも求められるような三角形の面積を積分で求めてみました。ですが、積分のやり方を知っていれば、面積を求めたい対象が関数として表せる状況であれば、どんな面積や積算値でもあっという間に求めることができます。次の章で、積分の威力を示す例をご紹介しましょう。
バームクーヘン積分で円の面積を求める
小学校のころ習ったけど、なんでそうなるのかさっぱりわからないものの代表例として円の面積の公式を求めてみましょう。使うのは「バームクーヘン積分」と呼ばれる考え方です。名前の通り、円をバームクーヘンの年輪のような薄い輪っかの集まりとして考えることで、積分の式に持ち込んでいきます。
円から薄いバームクーヘンを取り出す
下図のような半径 \(R\) の円を考えてみましょう。中心から距離 \(r\) の位置にある、厚み \(dr\) の非常に薄い輪っかを1つ取り出して考えます。

この輪っかをチョキンと切って、無理やり伸ばしてまっすぐにして、次の図のような台形にしてしまいましょう。

厚み \(dr\) の輪っかを台形だとみなすと、台形の高さは \(dr\) になりますね。また、台形の上底と下底はそれぞれ \(2 \pi r\) 、 \(2 \pi (r+dr)\) になります。従って、この台形の面積 \(dS\) は次のような式で表すことができます。
$$\begin{aligned} dS &= \left\{2 \pi r + 2 \pi (r+dr) \right\} \times dr \div 2 \\ &= 2\pi (rdr + \tfrac{1}{2}dr^2) \end{aligned}$$無限に薄いバームクーヘンの層を考える
積分を実行する場合は、「区間を無限に小さく分割していき、 \(dr\) を限りなく \(0\) に近づける」という重要な考え方があります。この時、 \(dr\) の2次の項である \(dr^2\) は、限りなく \(0\) に近い値を2回かけ合わせているため、同じカッコ( )の中に入っている \(rdr\) と比べて無視できるほど小さい値になると考えられます。従って、先ほどの \(dS\) を求める式は \(dr \rightarrow 0\) の極限では次のように書くことができます。
$$ (dr \rightarrow 0 の極限で)dS = 2 \pi r dr $$この式は、 \(dr\) を限りなく \(0\) に近づけてしまえば、先ほどの細長い台形を縦 \(dr\) 、横 \(2 \pi r\) の長方形と見なして計算してもOKですよ! ということを教えてくれています。
積分を実行する
さて、準備は整いました。円の中の細いバームクーヘンを取り出して台形にし、 \(dr\) を限りなく \(0\) に近づける約束と引き換えに台形を正方形にすることができました。いよいよ、ここに魔法の積分記号 \(\int\) をくっつけて積分の計算をしてみましょう!
$$ \int dS = \int_0^R 2 \pi r dr $$左辺の面積に関する積分の被積分関数は \(1 = S^0\) と見なすことができます。従って、先ほど三角形の面積を求めるときに使った公式をもう一度使うと次のように簡単に解くことができます。
$$ \int dS = \int S^0 dS = S \\ \because \int x^n\,dx = \frac{x^{n+1}}{n+1} + C \qquad (n\neq -1) $$今の場合は積分定数 \(C\) は右辺の積分をすることで、定数の任意性を排除することができるので必要ありません。さて、続いて右辺の積分ですが、これもとても簡単です。被積分関数の \(2\pi r\) のうち、 \(2\pi\) は定数なので積分記号の外に出すことができます。そうすると、三角形の面積を求めるときと同様に、被積分関数はただの \(r\) なので、次のように解くことができます。
$$\begin{aligned} \int_0^R 2 \pi r dr &= 2\pi \int_0^R r dr \\ &= 2\pi \left[ \frac{1}{2}r^2 \right]_0^R \\ &= \pi \left[ R^2 – 0^2 \right] \\ &= \pi R^2 \\ \therefore S &= \pi R^2 \end{aligned}$$ちゃんと半径 \(R\) の円の面積は \(\pi R^2\) という公式が出てきましたね! ここで見てきたように、直線に囲まれた単純な図形だけではなく、曲線に囲まれた複雑な図形であっても、その形の特徴をうまく関数で表すことで、積分によって面積を求めることができるのです。
まとめ
いかがでしたか? 積分とは図形や変数の区間を無限に細かく分割し、その小さな部分をすべて足し合わせることで全体の量を計算するための道具です。小学生でも計算できる三角形の面積を、あえて積分で計算することで積分がどのような考え方で実行できるのかということを解説しました。そして、三角形と同じ方法で円の面積も計算でき、円の面積の公式が導出できることを確認しました。
実は今回扱ったような図形の面積だけでなく、物理学や化学、工学や経済学など様々な分野で積分はなくてはならない数学の道具となっています。物体の運動法則を記述したり、桜の開花日を予想したり、あるいは貧富の格差などを評価することにも積分は使われています。皆さんの身の回りでもぜひ身近な「積分」を探してみてくださいね。