【図解】微分とは? 直感で理解するわかりやすい微分のイメージ

突然ですが皆さん、FMXってご存じですか? FMXとは「Freestyle Motocross(フリースタイルモトクロス)」の略称で、巨大なジャンプ台からバイクごと空中へ飛び出し、空中でアクロバティックな技を決める超危険なモータースポーツです。参考になる映像を載せておきますので、興味のある方は是非見てみてください!

すごいですよね! まさにぶっ飛んだモータースポーツです。ライダーたちが空中で、バイクから手や足を離したり、くるくる回ったり、人間技とは思えないトリックを繰り広げています。

前出の映像にあったようなド派手なトリックを決めるためには、かなり大型のキッカーと呼ばれるジャンプ台(ランプと呼ばれることもある)を用いる必要があります。世界最高峰クラスの大会では数十メートル級のキッカーを用いることもあるようです。

さて、このキッカーを使ってライダーが空中に飛び出すときの角度は何度ぐらいだと思いますか?

ただの一直線の坂であれば、分度器を当てれば角度は簡単に測れます。ですが、FMXのジャンプ台は単純に「急な坂」を作ればいいわけではありません。途中で角度が急変すると、バイクが暴れ、ライダーは簡単にコントロールを失ってしまうため、ジャンプ台は「滑らかに角度が変化する曲線」でなければなりません。

滑らかな曲線ということは、傾きも連続的に変化するので、分度器を使ったり、一次関数のように

$$ 傾き = \frac{\text{y の変化}}{\text{x の変化}} $$

で求めるわけにはいきません。このような連続的に傾きが変化する関数においても、ある\(x\)における傾きを一発で求める計算手法が「微分」です。少々前置きが長くなってしまいましたが、この記事では微分を使ってフリースタイルモトクロスのジャンプ台における射出角を求めることで、微分とはどういうものなのか、微分の威力を図解していきます!

直線型ジャンプ台の場合

まず最も単純なケースとして、ジャンプ台が完全な直線だった場合を考えてみましょう。今回はすべてのジャンプ台について、

  • 地面に接している長さが \(6\mathrm{m}\)
  • ジャンプ台の最高点の高さが \(3\mathrm{m}\)

という条件を課します。

直線のジャンプ台は、数学的には比例の式\( \quad y=ax \quad \) で表せます。この式の\(a\)は「変化の割合」や「傾き」と呼ばれます。ここで、\(x=6\) のとき \(y=3\) という条件を比例の式に代入すると、

\[3=6a\]

より、\(a=\frac12\)と求まります。従って、ジャンプ台の関数は\( \quad y=\frac12x \quad\)と表すことができ、その傾きは\(\frac12\)ということになります。これをグラフにすると次のようになります。

原点から\((x, y) = (6, 3)\)に向かって、まっすぐ伸びている直線が現れます。この直線上では、どんな\(x\)においても、必ず傾きは\(\frac12\)となります。別の言い方をすると、傾きは「\((yの変化量)\div (xの変化量)\)」なので、ここで求めた直線の関数はいつでも「\(xが2増えたら、yは1増える\)」ということを意味しています。

さて、続いてグラフの傾きから角度を求めてみましょう。グラフの傾きから角度を求めるには、逆三角関数の1種である「\(\tan^{-1}\)(アークタンジェント)」を使うと便利です。\(\tan^{-1}\)は「\(\tan\)(タンジェント)」の逆関数ですので、まず\(\tan\)関数からおさらいしましょう。

「\( \tan \)(タンジェント)」は高校数学で習う三角関数の1種です。下図のような直角三角形を考え、一つの鋭角を\( \theta \)とするとき、\( \tan \theta = \frac{a}{b} \)と定義されています。

先ほどのグラフに置き換えると、\(a/b \:\)はグラフの傾きそのものなので、

\[ (傾き)= \tan\theta \]

と見なすこともできます。今、私たちはグラフの傾きから、角度を求めたいので、上の式を「\(\theta = \)」の形に書き換える必要があります。そこで「傾き」と「角度」の二つの変数を入れ替えた関数を「\(\tan^{-1}\)(アークタンジェント)」と定義し、次のような関係式を作ります。

\[ \theta= \tan^{-1} (傾き) \]

\(\tan^{-1}\)は特殊な場合を除いて暗算では計算するのが難しいですが、関数電卓などを使えば簡単に計算することができます。参考のためにアークタンジェント関数のグラフを載せておきます。

傾きが\(0\)の時は、\(\theta = 0\)ですが、傾きが大きくなるにつれて、\(\theta\)は\(90^\circ\)に近づいていきます。また、傾きがマイナスの時は角度も負の値をとることがわかります。

さて、先ほどの傾きが\(\frac12\)である直線状のジャンプ台の角度は\(\tan^{-1}\frac12\)を計算すれば求まります。実際にこれを計算すると角度は約\(26.6^\circ\)であることがわかります。これはスキーやスノーボードでも初級者から中級者向けといわれるゲレンデの角度ぐらいですね。

さて、ここまでの計算では特に「微分」という数学的なテクニックを使わずに、ジャンプ台の傾きを求めることができました。それは直線のジャンプ台の傾きは常に一定なので、ジャンプ台の底面の長さと高さがわかれば、単なる割り算で傾きを求めることができたからです。それでは、次は傾きが場所によって変化する複雑なジャンプ台の場合を考えてみましょう。

放物線型ジャンプ台の場合

次に、ジャンプ台が放物線だった場合を考えてみましょう。物体を空中に投げた時、物体の通る軌道は放物線になります。\(xy\)平面において、原点を通る放物線は次のように\(x^2\)に比例する関数として表すことができます。

\[y=ax^2\]

この式の\(a\)は単なる比例定数で、先ほどの直線を表す関数のように「傾き」という意味は持っていません。すでに皆さんご存じの通り、物体を空中に投げた時、物体の速度は時々刻々と変わっていくため、放物線の傾きも時間とともに変化するためです。直線のジャンプ台を考えた時と同様に、\(x=6\mathrm{m}\) のとき \(y=3\mathrm{m}\) という条件を使って\(a\)を求めてみましょう。この条件を放物線の式に代入すると、

\[3=a\times6^2\]

となります。ここから\(a=\frac{1}{12}\)と求まりますので、放物線ジャンプ台の関数は次の式で表されます。

\[y=\frac1{12}x^2\]

放物線ジャンプ台の関数がわかりましたので、グラフを描いてみましょう。

先ほどの直線的なジャンプ台と比べると、緩やかなカーブを描いているので、バイクでジャンプ台に侵入する際の衝撃が小さくなり、よりスムーズに車体を持ち上げられそうですね。でも、射出角を求めようと思うと困ったことが起こります。放物線ジャンプ台では、その角度が一定ではなく、時々刻々と変化していくので、割り算で求めたり、分度器を当てて求めることができません。

このように、「傾き」が一定ではない場合であっても、指定した点の傾きを一発で求める魔法のような方法が「微分」なのです。ここでは微分という数学的操作の証明や詳細には立ち入らず、その威力だけを直感的にわかるように紹介したいと思います。

まず、微分を実行するためには注目している値の変化を関数として表す必要があります。放物線ジャンプ台の例では、水平方向の座標を \(x\)、垂直方向の座標を \(y\)としたとき、ジャンプ台の形状は関数 \(y(x)=\frac1{12}x^2\)で表されることを突き止めました。

次に、この関数を「微分」します。数学的な操作の流れだけを先に説明してしまうと、傾きを知りたい関数 \(y(x)\)を微分することで、その関数の傾きを表す「導関数 \(y'(x)\)」が求まります。

ある関数を微分してその導関数を求めるためには、対象の関数によって様々なテクニックを駆使する必要があります。時には微分できない関数に出会うこともあります。ですが、放物線の関数のような \(x^n\)の多項式であれば、導関数の導出はとても簡単です。具体的には \(x^n\)の導関数は下記のように形式的に求めることができます。

\[y'(x) = nx^{n-1}\]

え?これだけ? と思った方もいらっしゃるかもしれません。\(x^n\)の導関数は指数を係数として前に出し、指数自体から1を引けば求まるのです。いくつか例を挙げてみましょう。

$$ \begin{align} y(x) &= x \quad\Longrightarrow\quad y'(x) = 1 \cdot x^{0} = 1\\ y(x) &= x^2 \quad\Longrightarrow\quad y'(x) = 2 \cdot x^{1} = 2x\\ y(x) &= 2x^3 \quad\Longrightarrow\quad y'(x) = 2 \cdot 3 \cdot x^{2} = 6x^2\\ \end{align} $$

上の計算で求めた導関数 \(y'(x)\)は、ある \(x\)における元の関数 \(y(x)\)の傾きを表す関数です。さて、放物線ジャンプ台の例に戻りましょう。放物線のジャンプ台の形状を表す関数は \(y(x) = \frac{1}{12}x^2\)ということまではわかっていました。この関数を微分し、傾きを表す導関数を求めてみます。

$$ y(x) = \frac{1}{12} x^2 \quad\Longrightarrow\quad y'(x) = \frac{1}{12} \cdot 2 \cdot x^1 = \frac{1}{6} x\\ $$

この結果は、放物線のジャンプ台では水平方向の場所 \(x\)によって、傾きが \(\frac{1}{6}x\)で変化することを意味しています。今求めたいのはジャンプ台の一番右端、つまり \(x = 6\)の時の傾きなので、導関数にこれを代入すると、

$$ y'(6) = \frac{1}{6} \cdot 6 = 1\\ $$

と求まります。放物線のジャンプ台の端っこでの傾きは、とてもシンプルに「 \(1\)」であることがわかりました。傾きが \(1\)ということは、 \(x\)が \(1\)だけ進むと、 \(y\)も \(1\)だけ増加することを意味するので、直角二等辺三角形の斜面と同様に角度は \(45^\circ\)ということがわかります。

念のため関数電卓などを使って \(\tan^{-1} (1)\)を計算してみても、答えは \(45^\circ\)と出てくるはずです。

リリースポイントが同じ \(x=6\mathrm{m}\)、 \(y=3\mathrm{m}\)だったとしても、直線状のジャンプ台の射出角 \(26.6^{\circ}\)と比べて、放物線のジャンプ台のほうが \(45^{\circ}\)という、より急な角度で射出されるということがわかりました。

放物線ジャンプ台は、直線状のジャンプ台と比べるとジャンプ台侵入時の衝撃をはるかにやわらげ、より大きな射出角によるダイナミックな演技を可能とします。ですが、実際には放物線形状のジャンプ台はFMXでほとんど使われることなく、代わりに円弧形状のジャンプ台がよく用いられるようです。それは、放物線よりもさらに緩やかな立ち上がりと、最終的に急峻な射出角度を実現できるためです。続いて円弧形状のジャンプ台における射出角を微分を使って求めてみましょう。

円弧型ジャンプ台の場合

実際のモトクロスやFMXのジャンプ台では、円弧形状がよく使われます。円弧形状のジャンプ台は平らな地面とより滑らかに接続し、ジャンプ直前の急峻な角度の変化により、バイクの車体を急激に持ち上げられる形状です。そのため高速でのジャンプ台侵入と、より高さのあるジャンプを可能とします。

円弧型ジャンプ台のカーブがどれだけ急かは円の半径 \(R\)を使って表されます。同じ長さのジャンプ台であれば \(R\)が小さいほど、より急激に傾きが増加します。下図に \(R=7\mathrm{m}\)と \(R=10\mathrm{m}\)の二つの形を図示してみました。

地面に接地する部分の長さを \(6\mathrm{m}\)に固定して、異なる \(R\)の線の形状を比べると、 \(R\)が小さくなるほど急峻に立ち上がることがよくわかります。

さて、この記事で考えているジャンプ台は地面に接している長さが \(6\mathrm{m}\)、高さが \(3\mathrm{m}\)のジャンプ台です。このような大きさの円弧型ジャンプ台はどのような関数で表されるかを考えてみましょう。

半径が \(R\)で、グラフの原点を通る円の方程式は次のような数式で表されます。

\[x^2+(y-R)^2=R^2\]

ここで、\(x=6\) のとき \(y=3\) という条件を使って \(R\)を求めてみます。

$$\begin{align} 6^2+(3-R)^2 &= R^2 \\ 36+9-6R+R^2 &= R^2 \\ 6R&=45 \\ \therefore R &= 7.5 \end{align}$$

よって円弧の方程式は、

\[x^2+(y-7.5)^2=7.5^2\]

と求まります。この円の関数を図示すると次のようになります。

円の方程式 \(x^2+(y-7.5)^2=7.5^2\) には、円の上半分と下半分の式が含まれます。それは、 \(y=\)という形に式を直したとき、ルートを外すときに出てくるプラスマイナスに起因します。今、着目しているジャンプ台は下半分なので、円の方程式のうち下半分を表す式を求めておきます。求めると次のようになります。

\[y=7.5-\sqrt{7.5^2-x^2}\]

この関数は、先ほどの放物線の関数のように簡単に微分することはできませんが、それでも高校レベルの数学で十分に答えを出せます。ここでは導関数を求める手順の詳細は置いといて、求まった導関数を示してしまうことにしましょう。

\[y'(x)=\frac{x}{\sqrt{7.5^2-x^2}}\]

繰り返しになりますが、この導関数 \(y'(x)\)は、関数 \(y(x)\)の \(x\)における傾きを表しています。 そして \(x=6\) を代入すると、

\[ y'(x)=\frac6{\sqrt{7.5^2-6^2}}\approx1.33 \]

となり、 \(R = 7.5 \mathrm{m}\)、全長 \(6 \mathrm{m}\)の円弧型ジャンプ台における射出時の傾きが約 \(1.33\)であることがわかります。アークタンジェントを用いて射出角を求めると \(53.1^\circ\)であることがわかります。円弧型のジャンプ台は、放物線型のジャンプ台よりもさらに急な射出角であることがわかりました。

導関数の比較

さて、ここまで全長 \(6 \mathrm{m}\)、高さ \(3 \mathrm{m}\)の直線、放物線、円弧の3種類のジャンプ台における射出角を求めてきました。直線型のジャンプ台は(高さ)÷(長さ)という単純な割り算で傾きを求めることができました。放物線型のジャンプ台では放物線関数から簡単な微分操作により、導関数を求めることで任意の \(x\)に対する傾きを求めることに成功しました。円弧型のジャンプ台では、微分操作は少し複雑になりますが、基本的には導関数を求めることができ、そこから \(x = 6 \mathrm{m}\) 地点の傾きを求めることができました。下の図に、3種類のジャンプ台の形状を表す関数と、その導関数を並べて示します。

微分によって導関数をいったん求めてしまえば、どんな \(x\)座標の傾きであってもたちどころに求めることができるのです。また、導関数そのものを比べることで関数の「変化」がどれだけ急激なのかがわかります。この関数の「変化」とは、今回の例では、ジャンプ台の傾きが場所によってどれぐらい変わっているか、ということを意味します。下の図に3種類のジャンプ台の導関数を重ねて載せてみました。各ジャンプ台の傾きが場所によってどのように変化しているか、とてもよく理解できると思います。

\(y = \frac{1}{2} x \)で表される直線型のジャンプ台の傾きは、\(x\) によらず \(y = \frac{1}{2}\)で表されます。放物線型のジャンプ台の傾きは、 \( x \)に比例して傾きが大きくなっていきます。円弧型のジャンプ台では、 \( x = 0\)付近では、緩やかに傾きが増加していきますが、ジャンプ台の端に近づくにつ入れ、急激に傾きが大きくなっていることがわかります。

まとめ

今回、長さ \(6\mathrm{m}\)、高さ \(3\mathrm{m}\) という同じ条件であっても、ジャンプ台の形状を直線、放物線、円弧のどれにするかによって、ライダーが飛び出す瞬間の傾きが大きく変わることがわかりました。つまり、ジャンプ台の性能は単純に高さや長さだけで決まるのではなく、その途中の曲線の形によって大きく左右されるのです。

そして、その「飛び出す瞬間の傾き」を求めるために使ったのが微分です。微分とは難しい計算技術ではなく、一言でいえば「曲線のその場所での傾きを調べるための数学」です。今回の例では、ジャンプ台の関数を微分することで、ライダーが空中へ飛び出す瞬間の角度を正確に求めることができました。

学校で学ぶ微分は、最初は抽象的な計算に見えるかもしれません。しかし実際には、モトクロスやスキーのジャンプ台の設計をはじめ、ジェットコースターの安全性の検討、自動車の速度変化の解析、AIの学習アルゴリズム、さらにはロケットの軌道制御まで、私たちの身の回りのさまざまな技術で活躍しています。微分とは、現実世界で起こる「変化」を理解し、予測し、設計するための強力な道具なのです。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!

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