小学校で分数の割り算を学んだとき、「分数の割り算は、割る数をひっくり返してかける。」と教わったと思います。なぜ分数の割り算だけ、こんな不思議な計算をするのか、自信をもって理由を答えられますでしょうか? きっと小学生の時に先生は「ひっくり返してかける理由」をしっかり教えてくれたのだと思いますが、日々忙しく人生を過ごしており、「そんなことまったく思い出せないよ!」という方が多いのではないでしょうか? 今回は、そんな方々の心の隙間を埋めるべく、分数の割り算はなぜ割る数をひっくり返してかけるのか、について図解していきたいと思います。
そもそも割り算は\(1\)つ当たりの〇〇を求める計算
まず初めに、割り算とはそもそも何を求めたい時に用いる計算なのか、ということをおさらいしていきたいと思います。〇 \(\div\) △という形で表される割り算は、〇を「割られる数」、△を「割る数」と呼びます。この時、割り算は
- 割る数が、割られる数の中に何個入っているか
- 割る数1に対する、割られる数はいくらか
を計算するための演算です。もう少し柔らかい表現にすると「\(1\)つ当たりの〇〇」を求めるときに割り算を使います。いくつか例を挙げてみましょう。
■ \(6\) 個のリンゴを \(2\) 人で分けると \(1\) 人当たりのリンゴは何個か。
計算式は \(6 \div 2 \) で答えは \(3\) 個と求まります。これは \(1\) 人あたりのリンゴの数を求めていますよね。
■ 長さ \(10 \: \mathrm{m}\) のロープを \(2 \: \mathrm{m}\) ずつ切ります。何本取れるでしょうか。
計算式は \(10 \div 2 \) で答えは \(5\) 本ですね。これは \(2 \: \mathrm{m}\) のロープを \(1\) 単位としたときのロープの本数を求めています。
■ \(40 \: \mathrm{km}\) 走るのにガソリンを \(5 \: \mathrm{L}\) 使いました。 \(1 \: \mathrm{L}\) で何 \(\mathrm{km}\) 走れるでしょうか。
計算式は \(40 \div 5 \) ですね。答えはガソリン \(1 \: \mathrm{L}\) あたりに走れる距離、すなわち車の燃費を表していて、答えは \(8 \: \mathrm{km/L}\) になります。
■ \(120 \: \mathrm{km}\) の道のりを \(2\) 時間で走りました。平均時速は何 \(\mathrm{km}\) でしょうか。
これは単位時間当たりの進む距離、すなわち速度を求める問題です。計算式は \(120 \div 2 \) ですね。答えは \(60 \: \mathrm{km/時}\) です。
いかがでしょうか? 上の \(4\) つすべてが、割る数を \(1\) とした場合に、割られる数がいくつになるか、という問題になっています。
実際の問題で図解してみよう
これまで見てきたように、割り算では割る数が \(1\) の時の割られる数を求める計算だということがわかりました。さて、それでは実際の問題で「分数をひっくり返してかける」というのが、どのようにイメージできるのかを図解していきたいと思います。ここでは次のような問題を考えてみましょう。
これは、ペンキの量(割る数)が \(1 \: \mathrm{dL}\) の時、塗れる面積(割られる数)はどれくらいか、という問題ですね。従ってこの問題は、次の計算式を計算すれば回答が得られます。
$$ \frac{4}{5} \div \frac{3}{4} $$この計算式を図にすると次のようになります。

横軸にペンキの量を、縦軸に塗れる面積をとると、青い面積がペンキ \( \frac{3}{4} \: \mathrm{dL}\) で塗れた面積 \( \frac{4}{5} \: \mathrm{m^2}\) を表しています。今求めたいのは、赤い線で囲まれたペンキ \( 1 \: \mathrm{dL}\) で塗れる面積です。これをどうやって求めるか、戦略を立ててみましょう。
青く塗られた四角と、今から求めたい赤い四角を見比べると、ちょうどペンキ \( \frac{1}{4} \: \mathrm{dL}\) 分だけ差があることに気づきます。ですので、まず先にペンキ \( \frac{1}{4} \: \mathrm{dL}\) で塗れる面積を求めておいて、それを \( 4\) 倍することで、ペンキ \( 1 \: \mathrm{dL}\) で塗れる面積を求めるのはどうでしょうか? この戦略を図にすると次のようになります。

それでは、まずペンキ \( \frac{3}{4} \: \mathrm{dL}\) で塗れた面積 \( \frac{4}{5} \: \mathrm{m^2}\) を \(3\) で割って、ペンキ \( \frac{1}{4} \: \mathrm{dL}\) で塗れる面積を求めてみましょう。計算式は次の通りです。
$$ \frac{4}{5} \div 3 $$割られる数が分数ですが、割る数が普通の自然数なのでこの計算は簡単にできそうです。割る数と分数の分母をかけて、答えは \( \frac{4}{15} \) になりますね。

次に、求めた \( \frac{4}{15} \) を \( 4 \) 倍して、ペンキ \( \frac{1}{4} \: \mathrm{dL}\) で塗れる面積にしましょう。これもそんなに難しくありません。分数の分子に \( 4 \) をかけて、答えは \( \frac{16}{15} \) です。

分数同士の割り算でも、2つのステップに分けることで、結構あっさり計算することができました。でも、ちょっと待ってください。今の計算の流れを、もう一度よく見てみましょう。
先ほどの計算では、 \(\displaystyle \frac{4}{5} \) を \(3\) で割って、 \(4\) をかけました。それを数式でまとめて表すと、次のような式になります。
$$ \frac{4}{5} \div 3 \times 4 $$掛け算と割り算は左から順に計算しますが、この場合は「\(\div 3\)」と「\(\times 4\)」をまとめて考えることができるので、、 \(3\) と \(4\) を入れ替えると…
$$ \frac{4}{5} \times 4 \div 3 $$\(3\) と \(4\) を分数でまとめると…
$$ \frac{4}{5} \times \frac{4}{3} $$もうお分かりの方も多いと思いますが、ここで得られた式を最初の式とくらべて見ましょう。
$$ \frac{4}{5} \div \frac{3}{4} = \frac{4}{5} \times \frac{4}{3} $$左の式の割る数がちょうど上下反転して逆数になって、右側では「かける数」になっています。これがまさに「分数の割り算はひっくり返してかける」ということですね。
図を使いながら、ペンキ \( \frac{3}{4} \: \mathrm{dL}\) で塗れる面積、 \( \frac{4}{5} \: \mathrm{m^2}\) を、まずは \(3\) 等分して、その後 \(4\) 倍しました。この計算過程をまとめると、あたかも最初に考えていた分数の割り算において、割る数をひっくり返してかけ算になおした式が出てきました。
なぜ逆数をかけると計算できるのか?
もう少し、一般化して考えてみましょう。〇 \(\div\) △という形で表される割り算の答え「商」は〇と△の比、すなわち分数として表すことができます。
$$ 〇 \: \div △ \: = \: \frac{〇}{△} $$さて、この時「割る数△」を \(1\) にしようとすると、どんな計算をすればいいでしょうか? 分数は分子と分母に同じ数をかけても、全体として値は変わりません。ですから、\(\frac{1}{△}\)を分子と分母にかけてやると、
$$ \frac{〇 \times \frac{1}{△}}{△ \times \frac{1}{△}} = \frac{〇 \times \frac{1}{△}}{1} $$となって、分母を \(1\) にすることができるのです。この時、分子に出てくる \(〇 \times \frac{1}{△}\) は、割る数を \(1\) にしたときの割られる数なので、割り算の答えそのものです。
もう一度整理して書くと、「〇 \(\div\) △」という割り算は、割る数 △を \(1\) にしたときの割られる数が答えになってます。割る数 △を \(1\) にするためには、割り算を分数だとみなして、分子と分母に \( \frac{1}{△}\) をかければいいのでした。その結果、次のように式を変換できることがわかりました。
$$ 〇 \: \div △ \: = 〇 \times \frac{1}{△} $$この式は「△で割る」ということが「 \( \frac{1}{△}\) をかける」ことに等しいことを示していますね。 \( \frac{1}{△}\) は△の逆数なので、分数の割り算はひっくり返してかける、という計算方法が証明されました。
まとめ
今回は、「なぜ分数の割り算は割る数をひっくり返してかけるのか」について解説しました。
学校では「分数の割り算はひっくり返してかける」と教わりますが、その理由までしっかり覚えている人は意外と少ないものです。しかし、その計算方法は決して暗記のためだけに作られたルールではありません。
まず大切なのは、割り算とは「割る数を \(1\) としたとき、割られる数はいくつになるかを求める計算」であることです。言い換えれば、「 \(1\) つ当たりの量」を求めるための計算です。速度や燃費、単価など、私たちが日常で使う多くの量も割り算によって求められています。
分数の割り算も本質はまったく同じです。今回のペンキの例では、まずペンキ \( \displaystyle \frac{3}{4} \mathrm{dL}\) の情報から、ペンキ \( \displaystyle \frac{1}{4} \mathrm{dL}\) のときの面積を求め、その後に \(4\) 倍することで、ペンキ \(1\mathrm{dL}\) 当たりの面積を求めました。その計算を整理すると、結果として「割る数をひっくり返してかける」という計算方法が自然に現れました。
つまり、分数の割り算で逆数をかけるのは不思議なテクニックではなく、割る数を \(1\) に変換して考えやすくするための工夫なのです。公式だけを覚えるのではなく、その背景にある考え方まで理解できると、数学はぐっと面白くなります。ぜひ今後は「なぜそう計算するのか」を意識しながら、さまざまな計算問題に挑戦してみてください。