皆さんこんにちは、はてなクマです。
普段は全く意識しないですが、私たちが普段ストップウォッチで計る10秒はどこでも10秒ですよね。
でもこれって当たり前のことんじゃないんです。時間の進み方は観測者の運動状況や置かれている状況によって変化するものなんです。
「時間が観測者によって変わってしまう?そんなバカなことがあるわけないでしょ!」と思っている方も多いかもしれません。でも、アインシュタインの作り上げた相対性理論によると、時間はどこでも同じ「絶対的」なものではなく、見る人によって形を変える「相対的」なものであると説明されています。
時間の相対性はさまざまな実験によって、すでに本当であることが確かめられています。この記事ではそんな相対性理論から導かれる「時間の相対性」について図解による直感的な説明をご紹介します。
そもそも相対性理論とはどんな理論なの?
アインシュタインの作り上げた相対性理論とはどのようなものなのでしょうか?相対性理論は一言でいうと、「この世で唯一絶対的なものは光の速度である!」と言う理論です。
相対性理論が登場する前は、アイザック・ニュートンによって作られた、ニュートン力学がこの世を支配していると思われてきました。ニュートン力学では、時間や空間はどこでも一様であり、物理現象が起こるただの舞台としての役割しかありませんでした。
しかし、アインシュタインは時間や空間が観測者の状態によって様々に形を変える相対的なものであることを指摘し、代わりに絶対的なのは「光の速度」である、と予言したのです。
相対性理論と一口に言っても、実は大きく分けて2つの理論から構成されています。「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」です。
名前だけからすると、特殊相対性理論のほうが難しそうですが、実は逆です。「特殊」と言う意味は、「常に速度が一定である物体のみを扱うことのできる」と言う意味です。ですので、理論の適用範囲が限定的なんですね。
一方、一般相対性理論では加速する物体の運動や、重力を扱うことができます。
これら2つの理論は、ニュートン力学では説明のできなかった水星の近日点移動の問題や、重力レンズによる光の曲がり等、様々な物理現象を通して正しいことが証明されています。
さて、この相対性理論を使って考えると我々にとって当たり前に流れている「時間」と言うものが、観測者の状況によって遅れてしまう、と言う現象が予言されます。この時間の遅れは実は次の2つの場合に起こります。
- 物体が光速に近い速度で運動している時
- 物体が重力の強い場所に置かれている時
1 は特殊相対性理論の、2 は一般相対性理論の枠組みの中で理解できます。さて、それでは相対性理論による時間の遅れを、実際に図解してみましょう!
光速に近い速度で運動することによる時間の遅れ
特殊相対性理論によると、どんな観測者から見ても光の速度は一定です。これっていきなり私たちの直感に反してますよね。だって時速100kmで走る電車を、時速50kmで走る自動車から見たら、電車は時速50kmで走っているように見えると思いますもん。
図にするとこんな感じでしょうか。
当然、時速40kmで動く観測者(車)から、同じ方向に時速100kmで動く対象(電車)を見ているので、車に乗っている人は電車の速度が時速60kmであるように感じられるでしょう。
$$100 \mathrm{km/}時 \quad – \quad 40 \mathrm{km/時} \quad = \quad 60 \mathrm{km/時}$$ところが、光の速度で光を追いかけても、やっぱり光の速度は変わらないのです。この光速度不変の原理は物理学の法則がどんな場所でも成り立つためになくてはならないものなのです。
例えば、光の速度はだいたい秒速30万kmであることが知られていますが、秒速5万kmで宇宙をとんでいるロケットから、同じ光を見てもやっぱり秒速30万kmでどんでいるように見えるということです。
それでは、「光の速度がどんな観測者から見ても一定」ということを認めてしまうと何が起こるでしょう?
そう、光速に近い速度で運動している物体の時間が相対的に遅れるのです。
次の図を見てください。地球上からロケットが出発して宇宙をぐるりと周り、また地球に戻ってくる宇宙旅行を考えます。
地球上で待っているのは太郎、ロケットに乗って宇宙を旅するのは猫丸です。猫丸の乗ったロケットは、もはやほとんど光と同じ速度で宇宙を飛行することができます(特殊相対性理論では物体が光速になることが禁止されています)。
地球を離れた猫丸のロケットは、宇宙を一回りして地球に戻ってきます。そろそろ折り返し点です。
比較のため、猫丸のロケットが飛ぶ経路に沿って光も飛んでいくことにします。それでは何が起こるかか見てみましょう。
予定されていた経路を一周回ってロケットが地球に戻ってきた時、太郎と猫丸から見た光の進んだ距離に違いが出てきます。
例えば、猫丸のロケットが光速の90%で飛行していて、地球上に残った太郎はほとんど静止しているとみなせるとします。そうすると、「猫丸のロケットから見た光の進んだ距離」は「静止している太郎から見た光の進んだ距離」の10分の1ということになります。
太郎と猫丸からみた光の速度は同じ秒速30万kmなので、2人にとって変わらなければならないのは時間の進み方、ということになります。つまり、猫丸がロケットに乗って宇宙を旅している時間の感じ方は、猫丸よりも太郎の方がとても長く感じる、ということになります。
重力による時間の遅れ
一般相対性理論によれば、重力の強い場所でも時間の遅れが発生します。この重力による時間の遅れも、光速度一定の原理から理解することができます。
質量の大きな天体が宇宙空間に浮かんでいる時、その周りの空間は質量によって曲げられ、天体の中心に向かって空間が落ち込んでいくため、私たちには重力が働きます。
この重力の実態は「空間の曲がり」なので、質量のない光(光子)であっても重力の働きによって曲がった経路で進むことになります。
例えば、次の図のように重力によって曲がった空間を進む光が太い帯状になって進んでいるところを想像してみてください。
この光はA地点からB地点まで進むわけですが、経路の内側を通る光の方が外側を通る光よりも進む距離が短いですよね?
この光は1つの経路を通るので、A地点から出発するのもB地点に到着するのも同時です。なのに、内側と外側で進む距離が異なるということは見かけ上、光の速さが変化しているように思えます。
ですが、相対性理論により光速度一定の原理があるため、実際には経路の内側は光がゆっくり進むのではなく、時間の流れそのものがゆっくりになっています。
反対に経路の外側の軌道では光が早く進んでいるのではなく、内側の経路と比較して相対的に時間の流れが速いことになります。
このように、重力による空間の曲がりが大きいほど、本質的に時間がゆっくり流れるのです。
この重力による時間の遅れは、私たちの身近なところでも発生しています。私たちの暮らしている地球の地表付近では、そのはるか上空を飛行している人工衛星よりも重力によって時間がゆっくり進んでいるのです。
人工衛星が感じる時間の遅れは、地上に対して100億分の4.45秒というとても小さな値です。ですが、この時間の遅れを考慮しない場合、GPSによる位置計測の誤差が数百メートルにもなってしまうそうです。
また、宇宙において最も強力な重力を発するブラックホールの付近では、その強烈な重力によって時間の遅れが無限大になってしまいます。つまり、地球からロケットで飛び立ち、ブラックホールの極近傍を飛行して地球に帰ってくると、地球ではロケットの飛行時間に比べて途方も無い時間が流れていることになります。
その時ロケットの乗組員が目にするのは高度に発展した人類文明がある地球なのか、全てが滅亡してしまった地球なのか、う〜んなんともSFの世界ですがこれは机上の空論では無いんですよね。
まとめ
いかがでしたか?
私たちにとって当たり前に流れている時間も、運動する物体の速度や重力の強さによって変化してしまう「相対的」なものなのです。
この時間の遅れが重要になるのは物体の速度が光速に近づいた時やとても強い重力を受けている時だけなので、普段我々には相対性理論の効果を身近に感じることは少ないかもしれません。
それでも、この宇宙を支配している法則が私たちの感覚を超越しているというのはとてもワクワクしますよね。みなさんが夜空を見上げた時に見える星の光も強い重力によって曲げられた、ゆっくりした時間の流れを経験した光かもしれませんね。